【協同ネット通信 No.81 ②協同ネット50周年企画】スタッフ座談会
※この記事は、当団体が発行している広報誌「協同ネット通信」No.81(2023年秋号)に掲載された内容をWeb用に再編集したものです。
協同ネット50周年企画 スタッフ座談会
来年、協同ネットは50周年を迎えます。長い積み重ねの延長線上にある今を、若手職員たちはどのように受け取っているのでしょうか。
今回は各地で働いて3年前後の若手スタッフの座談会をお届けします。
座談会参加スタッフ
佐藤響 アンサンブル光が丘 / 練馬
野澤恵美 フリースペースコスモ / 三鷹
辻井貴大 コローレ / 相模原
佐藤洋作 協同ネット代表
自己紹介
佐藤響 学校に行きたくない人とかかわる仕事、カウンセラーとかやってみたいと思って中学・高校を過ごしていて、大学2年生の時に「ぱれっと」を知って、ボランティアを3年間続けた。だんだんカウンセラーではなくてもっと直接かかわることをしたいと思ってきた。当時のスタッフにも相談したりして、協同ネットに参加させてもらって今4年目。
練馬区生活福祉課と連携して、小学生から高校生が来れる居場所と勉強会をやっています。最近高校生が増えてきていて、料理や園芸企画、最近はキャンプやバーベキューなど外に出る活動をいっぱいやっている。高校生を見ていて、人と繋がりたいという思いがある反面、自分からつながっていけないとか、孤立しちゃってる状況が長くてひとりでいい、人を信じないという人が多い。でも一緒にいると何かしようとそわそわしていたり潜在的に交流を求めている。つながって、人との交流っていいな、話したいなと思えるきっかけになる場所になるといいなと思っています。
野澤 コスモのボランティアに大学2年生の時にサービスラーニング(社会教育プログラム)を利用して入った。もともと居場所みたいなところにかかわってみたいと思っていたけど、自分からアクセスする勇気がなかった。当初は学習センター(三鷹学習支援)にも入った。そのときに辻ちゃんは4年生だったから卒業していく辻ちゃんを見ていた。今の現場はコスモ。学校に行っていない小中学生が来ていて、毎日来るメンバーが15〜20人くらい。自分たちの居場所を自分たちでつくろうということでみんなで予定決めをしたりしてやっています。今年は夏に富士山の冒険旅行とか電車で18切符でどこまで行けるかということで青森まで行ってねぶた祭に参加したり。いろんな個性の人がいておもしろいです。
辻井 大学生の時の授業に協同ネットの練馬の人がゲスト講師で来て、学習センターのボランティア募集のチラシをもらって三鷹に来た。教員に興味があったので、バイトをやめたばかりでつなぎの期間としてボランティアに入った。すぐに学習センターの夏合宿があった。高校2、3年生と一緒に小学生の企画を考える。そこでうまくいかないことも含めて、ちゃんと伝え合ったりしていて、すてきだなと思って。そこからハマった感じがしている。4年間続けた。外で働きたいなというのがあって、就職活動をして一般企業に努めて、その間はつまらないなーと感じていた。働いている人たちが転職ありきで働いている。そんなときに目の前の子どもと関わっていたのを思い出して、ここで働きたいなと思った。今は高校生年代から30代までが集うコローレと中央区の勉強会、市内の中学校の教室に通うのが苦手な人が集うラウンジでの週1回の「辻ちゃんの部屋」のスタッフもしています。
現場のリアル
辻井 中学校に入ってみると目の前に進路未決定の人がいる。その他にも親との関係、本人の悩みや発達課題なども直面する。5年後10年後に、コローレで出会うかもしれないと考えると義務教育終了後のかかわりが弱いということが見えてきて、社会的孤立を防ぐということがミッションかなと思えてきて、中学校とコローレや勉強会の架け橋になればいいかなと2年目くらいから感じるようになってきて、興味関心もそこになってきた。でも上手くいかなくて。週1回の中学に入るのも。生徒や先生との関係は悪いわけじゃないけど、自分のフィールドじゃない感じがして、思い描いた感じではない。今は中学校の先生にコローレのことを知ってもらいたいなということで、卒業後にどこかにつながるようにと思うようになってきた。あきらめているつもりはないですけど、自分だけでは限界があるなと思って。
生活困窮の枠で来る人たちも思いのほかいろいろ抱えている。小さなことでも思い出をつくっていくことでそれが基盤になっている。誰かと何かを一緒に考えてやる積み重ねっていうのは大事なのかなと感じるようになった。そういう意味で社会教育的なアプローチに関心を持つようになった。教育って教科学習だけじゃないんだなというのも見えてきました。
佐藤洋 学校現場のリアルと繋がっているね。その居場所で自己完結していていっぱいいっぱいになっていると見えてこない。もともと塾からはじまっていなければ協同ネットももっと違う居場所になっていたかもしれない。居場所の向こう側にある社会が地続きに繋がっている。そこをどうしていくのかというリアルなテーマがあった。
辻井 いろんな人たちといろんなことを相談しながら考えていて、それがおもしろい。実践というとちょっと恥ずかしいというか、イマイチわからないと思っていたけど、自分も小さな実践をやっているのかなと思ってきた。
子どもたちの気持ちに刺激を受けて
野澤 スタッフになって、メンバーたちが自分がやりたいことをやり切りたい気持ちだったり、どうにか人と関わりたいという気持ち、今の自分から変わりたい・成長したいという強い気持ち・覚悟を感じることが多いなと思って。それって自分が今まで同世代と関わってきたときにはあんまり感じなかった。本来はそういう気持ちを持っているだろうなと感じたし、誰だってそういう願いみたいなものがあるんだなと思って、それをサポートするのがスタッフなんだと思った。そういう子どもたちの気持ちには影響を受けた。2年、3年経っていって人の中にいることで変わっていく。人、社会、言葉の中にいることで変わっていくっていうのは本当にそうなんだなと実感している今日この頃。
佐藤洋 環境が変わればそれが出てくる。勝ち負けじゃなくて、みんなと力を出し合っていることが喜びなんだと感じられた体験があった。みんな参加したい、輝きたいと思うのは友だち、仲間がいるからだった。スタッフはその媒介者。こんなに面白いことはないなと思った。話を聴いていて、今までの自分の学習観や学力観を乗り越えていく学びを本人もやっている。そういうことに感動する自分に作り直していっているんだなと思った。
場をつくることの意味
佐藤響 アンサンブルは、やってきたことがぶつぶつ切れていく。やってきたことや、小学生から高校生、それぞれがつながっているかというと微妙な感じ。自分たちもあれやりたいというのがなくて毎年作り直し。スタッフが働き掛けないといけないことがたくさんあったんです。コスモの報告会を聴いたときに、泊まりに行っているのを見て、メンバーからの「行ってみたいと思っていたけど行けなくて」という言葉があるじゃないですか。それがすごい衝撃的。次の年になったら主体的にやってるじゃん、とか。自分は1年ごとしか見ていないから急成長を感じる。活動が継承されて行くというのって大事。指標になるというのを感じた。コスモはコスモだけど、そういうエッセンスもあるとおもしろい居場所ができそうだな、やりたいなという野望は抱いています。
佐藤洋 居場所は場が子どもたちをつないでいて、最終的には作り上げられてきた場がスタッフも子どもたちも育てる。それができてはじめて居場所じゃないかな。それをどうつくるか。同じことをやるというルーティンが必要。憧れの存在も。小さい子から承認されて支えられるということもあるよね。
佐藤響 コスモの報告会聴いているとおもしろい反面嫉妬する。楽しかったんだぞって誇れるようなものをみんなでできたら。他のエリアの報告会とかメンバーと一緒に行けたら良いよねと現場で話している。報告集みたいなものが居場所にあるだけでも違う。
座談会のごく一部をお伝えしました。もっと詳細、そして語られた他の話題についても触れたいところですが、紙面の都合上、ここまでとさせていただきます。
孤立の中での競争によって子ども・若者が自分を表現できない現状、本当は自分らしく輝きたいと願っている子ども・若者との出会い、場をつくることで自分の課題を乗り越えていく仲間と出会い躍動していく姿にも触れながら、それを支える場づくりがスタッフの仕事だということを既に意識していました。そしてスタッフが互いを意識して高め合う競争をしようとしています。座談会の最後には、私たちの仕事の意義を発信していきたいと話していた彼らも印象的でした。
(編集・たかはしかおる)


