【協同ネット通信 No.82 ①特集】波瀾万丈なコスモの23年度をふりかえる
※この記事は、当団体が発行している広報誌「協同ネット通信」No.82(2024年春号)に掲載された内容をWeb用に再編集したものです。
波瀾万丈なコスモの23年度をふりかえる
〜飽きが来ない日常〜
初めまして。コスモのメンバーのエミカです。通常のNPO通信はスタッフが寄稿しているのですが、ある日メンバーが作成している「Cosmo news」用の記事を私が書いていたところ、コスモスタッフに「これいいじゃん」と言われ、メンバーの記事がNPO通信に載ることになりました。
この記事はコスモの2023年度を振り返るコラムです。23年度に行った大きな企画は農業体験と夏の企画、平和ゼミの3つ。農業体験とは長野県佐久市望月で現地の米農家さんと共に一年を通し、計7回の作業でお米を育てる体験です。夏の企画はその名の通り夏に行う大きな企画で、場所や目標はその年によって違います。23年度は二つの企画を行いました。
夏の企画の一つである「電車旅」はJRが発行している『青春18切符』を使い、各駅停車の電車を乗り継いで青森まで行き、青森の伝統的な『ねぶた祭り』に跳人として参加しました。もう一つの企画「富士山冒険」とは、海抜0mから三つのキャンプ場を経由し、日本一の高さを誇る富士山山頂を目指すものです。
そして、平和ゼミとは毎週火曜日に集まり、一つのテーマについてみんなで考えたり、話し合ったりします。これまでは日本の食料自給率やLGBTQ+など、その時にメンバーが興味があるものについて調べたり、学んだりしています。23年度は沖縄へスタディーツアーに行くため、沖縄戦の歴史を中心に、メディアリテラシーなども学びました。
今回はコスモの23年度の動きを大まかにまとめたものになります。大きな動きだけなので「めっちゃアクティブな集団じゃん」と勘違いしやすいのですが、お菓子を作ったり、みんなでゲームをしたり、映画を見たりと一日中室内で過ごす日もたくさんあります。と、前置きが長くなってしまいました。それでは一緒に振り返っていきましょう!
4月
新しい年度が始まった4月。最初にスタッフが全メンバーにやりたいことや目標を聞き取りを行います。それを元に今年の冒険や日常的に行う企画などを追加します。23年度は毎週火曜と水曜の午前に勉強をする「学習クラブ」やのんびりキャンプをする「日常キャンプ部」、コスモの建物の1階にあるコミュニティーベーカリー『風のすみか』でパンを販売を目標にする「パンプロ」や市民農園でピーマンやバジルなどの夏野菜と大根や芽キャベツなどの冬野菜を育てる「畑クラブ」などの企画が追加されました。
そして、望月で種まきの作業を行うことが出来ました。昨年もコロナウイルスの影響で実施することが出来なかったため、4年ぶりの種まきでした。
5月
5月は2つの宿泊農業体験があります。まず、上旬に代かき。水を張った田んぼを鍬で耕す2泊3日の作業です。続いて下旬に田植え。1泊2日で代かきで土台を作った田んぼにお米の苗を植えます。そして、移住クラブというのも行いました。デンマークからギャップイヤーで日本にやってきた学生にデンマークの文化や生活などを教えてくれました。詳しくはメンバーのユウキがCosmo newsで説明しますのでお楽しみに!

6月
夏の準備が本格的に始まる6月。富士山組は体力をつけるために、雨のなかでもウォーキングに励んだり、陣馬山から高尾山までの縦走を行ったり、食料や荷物を揃えたりと着実に準備を進めていました。一方電車組は経路確認をし、紙提灯でミニねぶたを作っていました。そのころ平和ゼミでは毎週火曜の午後に集まり、戦争経験者の梶原さんにお話を聴き、そして『ひめゆりの塔』という映画の1982年版と1995年版の2本を視聴するなど知識をつけていました。
7月
30℃越えが続く東京から逃れ、コスモメンバーの一部は望月へ草刈りに行っていました。土の養分をなるべく稲が吸い取れるように、田んぼの淵である畔の草を刈る日帰りの作業です。パンプロではパンの形と具材をメンバーで考え、6月からは毎週月曜日にすみかの工房で、工場長に教わりながら試作をしていました。なんといってもすみかのパン生地は天然酵母。イーストを使用している生地とは違い、扱いが難しいです。それでも、繰り返すうちに上達していきます。ミートソースやチョコチップなどを上手に包めるようになりました。
8月
1週目に電車組が2泊3日の旅に出発しました。初日からというハプニングが発生しつつも無事に青森に到着し、ねぶた祭りに参加することが出来ました。3週目にパンプロの販売した商品は『カメたろう』と『幸せの四葉パン』です。お客さんには卒業生や保護者、ボランティアさんたちが来てくれ、開店してから40分ほどで完売し、大成功でした。4週目からは富士山組が7泊8日の冒険旅行へ出発しました。海から富士山のふもとまで約34kmを歩き、そこから0合目から山頂まで登りました。
その頃、コスモはお泊り会を行いました。みんなで温泉に行ったり、夜ご飯にハンバーグを作ったりと非日常感がたっぷりで楽しかったです。
9月
夏の報告集の作成が始まりました。普段とは違う環境の中で考えたこと、感じたことを文章に起こし、メンバーがまとめます。コスモが報告集や報告会を行う理由は、活動費の一部に寄付を使用しているためです。寄付をしてくれた人たちに向けて、こんな活動を行ったと報告するための手段が報告集や報告会なのです。そして、2回目の草刈りにも行きました。作業は7月と変わりはないのですが、稲にお米がたっぷり実り、綺麗な黄金色に色づいていて、収穫が楽しみになりました。
10月
年度始まりから学びを進めてきたゼミメンバーはついに、戦争の歴史を学ぶため、沖縄スタディーツアーに向かいました。現地在住のコスモの卒業生、カオルさんやガイドをしているおじぃと共に沖縄のガマや資料館を巡りました。さらに、農業体験の大本命である稲刈りも行ったので10月は大忙しでした。2泊3日で体育館ほどの大きさの田んぼに並ぶ稲を根元から刈り取ります。文字にすると簡単に見えますが実際はかなりの重労働。メンバーが集結し、力を合わせて作業しました。
11月
それではここで、毎週金曜日に行っている「みッチン」ついて語ろうと思います。「みんなのキッチン」の略であるみッチン。食べるメンバーでレシピを決めて、買い出しから調理、片付けまで行います。11月中旬には夏の報告会を行いました。緊張やわくわくなど様々な気持ちを感じながら、保護者に向けて報告をしました。下旬には脱穀を行いに望月へ。田んぼに行くとそこには信じられない光景が…。なんと愛情を込めて作ったお米が鹿に食べられ、大幅に減少してしまったのです。作業を行い、大きな衝撃と少しの悲しみを抱えながら東京に帰りました。

12月
夏の報告会が終わって一安心…というわけにも行きません。なぜなら、12月にも沖縄スタディーツアー報告会があるためです。さらに、すべての農業体験が終了したため、農業体験の報告集も作成しなければならないのです。5台あるコスモのパソコンが争奪戦になるほど、バタバタしていました。報告会の一日前にはクリスマス会を実施しました。おかずやお菓子、飲み物を持ち寄り、みんなで楽しくお昼ご飯を食べた後はプレゼント交換をしたり、演奏を披露したり…。小さなコスモに約30人が集まり、とてもにぎやかな一日でした。
1月
新年が明け、久しぶりにコスモに集まったメンバー。お正月らしくのんびりと過ごしたいのが本音ですが、お米報告会まで残り2週間弱。時間は少なく、やることはいっぱい。また多忙な日々になると思いきや、23年度はずっとギリギリで間に合わせていたせいか、お米報告会直前でも例年の緊張感がなく「まあ、本番までに完成できればいいか」というような感じでした。リハーサルの回数もかなり少なく、不安な時もありましたが、コスモのメンバーはとても本番に強いですし、なんとかなった過去も相まって「大丈夫!なんとかなる!」という根拠のない自信がありました(余裕があまりないと、いつか大変なことになりそうですが)。報告会の前日の餅パーティーでやる気をチャージし報告会に挑みました。

2月
2月には例年参加しているイベントがあります。それは昭和記念公園で行われる42㎞リレーマラソン。絶対に参加したいという熱意を持つメンバーのユウキが中心にメンバーを集め、23年度も参加しました。今回は学習塾と高等部、コスモの合同チームです。コスモの目の前にある井の頭公園で練習を重ね、本番に挑むはずが…。なんと大会当日は雨&雪予報という、THE悪天候。メンバーの体調を考え、棄権しました。
学校に通う「いわゆる学生」とは大きく違う私たち。一日中遊んでいるように見えるかもしれません。ですが、その日常の中にも学びや発見が多くあります。学校とは全く違う方法で学び、成長しているのです。私は23年度はその「成長」を大きく感じました。中学生になったこと、パンプロで手作りパンを販売したこと、富士登山に挑戦したこと、沖縄で戦争を学んだこと。今は必要ないと思っているいわゆる勉強もいつかはやりたくなる時が来ることもあり得るのです。必要があると思ったら、自主的に始めるのがコスモっ子です。一見、関係がないように見えても、10年後か20年後か役に立つときが来る可能性もあります。好きな時に好きなことをする。甘えのように感じることもある言葉ですが、子どもの頃から好きなことを我慢する必要はないと感じました。
23年度は気分だけ忙しい、周りが大変そうなど「なんか追われている気持ち」というのが長く続きました。その影響か体調が芳しくなかったり、やる気が湧かなかったりと、思うように作業が進まず、好きなことがたくさんできない状況が多くありました。24年度は、この部分をどう改善出来るかが重要だなと考えています。すべての願いを実現しつつ、楽しい気持ちで安心して過ごせるコスモを作りたいです。農業体験や夏の企画、沖縄スタディーツアーの詳細は、報告集に記載されているのでぜひご覧ください。23年度のコスモはこんな感じでした!
(文・あらきえみか)


