特定非営利活動法人 文化学習協同ネットワーク
代表理事 佐藤 洋作
教育の仕事に就くはずではなかったのに、気がついてみたらずいぶんと長く、深く子どもたちに、そして若者たちにかかわってきたことになります。 かかわり始めた当時もこの三鷹に住んでいたのですが、勉強の苦手なわが子のことを悩んでいたお母さんたちが、近所に住む学生たちに「子どもたちに勉強を教えてもらえないか」と声をかけてきたのが、私たちが子どもの教育にかかわるそもそもの始まりでした。 勉強を教えたり、夏には合宿したり、父母の集まりがあったりと、ちょっと風変わりな塾がアパートの一室にひらかれて40年近くが経ちました。 この間、落ちこぼれ、校内暴力、登校拒否・不登校、いじめと、子どもたちをめぐる問題は後を絶たず、子どもたちの生活はどんどん息苦しいものになっていきました。近年では、社会的ひきこもりやニートなど自立できない、仕事に就けない若者問題も深刻になってきています。私たちはそんな子どもや若者たちのSOSに耳を傾け、親たちの相談に応じながら、さまざまな教育プログラムや支援事業をつくりだしてきました。 ふり返ってみますと、私たちの取り組んできた仕事をひとことで言えば「居場所づくり」だったと言えます。不登校の苦しみや友達関係、進路、就職の悩みなど、どんなことでも聞いてもらって、仲間と語り合い、学び合いながら、しだいに解決の糸口や自分の中にある可能性が発見され、やがてそこから飛び立っていくことのできる空間、それが居場所です。 子どもや若者たちの生活世界からどんどん居場所が失われていく時代の流れに抗して、私たちは、子どもや若者たちと、保護者や地域の皆さんと協同して自立の根拠地である居場所を守ってきた、つくってきたのだと自負しています。 今日にいたっても子どもや若者をめぐる問題が解決されることはなく、私たちの仕事はますます広がってきています。教育や福祉の専門機関や行政などと連携し、多くの市民の皆さんとのネットワークを広げながら、発達支援から就労支援まで、子どもと若者の幸せになる権利を支えるためにがんばっていくつもりです。今後ともよろしくお願いします。