【協同ネット通信 No.88 ① 特集】2025年度コローレ活動報告会 豊かな地域共生社会をつくるためにコローレができること

2026年3月19日、毎年恒例となっている年度活動報告会を実施しました。通算6回目となる今回は126名が参加し、過去最多の人数となりました。
報告会は全4部構成で行われ、本稿ではその中から第3部のトークセッションについて報告します。

第3部『教育と福祉の出会うところ〜立場を超えたパートナーシップの必要性〜』

このセッションでは、教育相談課の丸岡智美氏と児童相談所の信田力哉氏にご登壇いただきました。
丸岡氏は、以前中央中学校に勤務されていた際、学校内にある教室へ入ることに不安のある生徒が通う『あいあーるラウンジ』の一部をコローレスタッフが運営していたことがきっかけで出会いました。信田氏は、以前中央生活支援課に在籍されていた際、コローレ事業の担当班長であったことがきっかけで出会いました。
お二人は日頃から密に連携を取っている関係にあり、コローレサミットへの参加など、メンバーとの交流もある存在です。

それぞれの実践現場から見える子ども若者を取り巻く現状

丸岡氏 今、教育相談課の業務の中では、不登校のお子さんたちに対してどのような支援が求められているのか、というところを主に担っています。そうした中で感じているのは、不登校自体が本市でも非常に増えてきているという現状です。
ただ、表面上は「不登校」と見えているものでも、そのきっかけや、そこに至るまでにどんなものを抱えているのかというところにも、目を向けていかないといけないと感じています。
例えば、人とのコミュニケーションに不安を感じているケースもあれば、中学校に入ってから学習についていくのが急に難しくなったと感じるケースもあります。また、ご家庭に関わる背景がある場合もありますし、本当にさまざまな要因が重なっていると感じています。
一方で、学校側もそうした不登校や、支援が必要なお子さんたちに対して、変化してきていると感じています。もちろんまだまだ道半ばではあるのですが、これまでのように集団を中心にした指導が基本だったところから、今は「支援」という視点を大切にしながら、一人ひとりの状況に目を向けていこうという動きが広がってきているように思います。
学校として何ができるのかを考えていこうとする流れは確実に出てきている一方で、まだまだこれから変化していかなければいけない部分も多くあります。そのためにも、学校現場だけでなく、教育委員会や福祉の皆さんとも連携しながら、現場の声を聞きつつ進めていく必要があると感じています

信田氏 児童相談所は、第一義的には子どもの命を守る機関です。
ただ、児童相談所の長い歴史の中で、義務教育を終えた後の若者に対する支援については、実は十分なメニューを持ち合わせていないのが現状です。
一方で最近は、高校生年代であっても虐待を理由に保護を求めてきたり、家族との関係がうまくいかない中で相談につながるケースが増えてきています。そうした中で、私たちには限界があり、若者たちの「居場所」をつくることができていないという大きな課題を感じています。
「普通」という言葉が適切かは分かりませんが、本来であれば家庭に居場所があり、地域の中でも活躍できる場があれば、児童相談所が関わる必要はないのかもしれません。ただ実際には、家庭の中で安心できる場所がなかったり、家族との関係がうまくいかない中で、傷ついている若者が多く相談に来ています。そうした若者たちにとって、安心して癒される場が社会の中に十分にあるとは言えないのではないかと感じています。
また、児童相談所が関われるのは18歳までですが、その後の人生をどう支えていくのかということについても、私たちは非常に大きな課題を感じています。20代の若者の死因の上位に自ら命を絶つという現状がある中で、私たちは子どもたちに「生きる力」を十分に伝えられているのか、また、それを準備した上で社会に送り出せているのかという問いを、常に抱えています。
だからこそ、安心できる居場所や、癒される場所、自分が自分でいてもいいと思える場所が必要だと考えています。そうした場としてコローレは非常に意味のある存在であり、必要だと感じた若者については、コローレにつなげさせていただいている、というのが現状です。

機能的な部分から見えるコローレの存在

丸岡氏 やはり、先ほど信田さんもおっしゃっていた「居場所」という言葉が、まず思い浮かびます。
カウンセラーやスクールソーシャルワーカーにつながっているお子さんたちを見ていると、義務教育を終えた後、多くの子が高校進学を考えるのが今の時代の流れだと思います。ただ、その一方で、「今はまだそのタイミングではない」と感じているお子さんも一定数いらっしゃいます。
そうした方々にとって、自分がどこに所属感を持てるのかということはとても大切で、その意味でもコローレは大きな役割を果たしていると感じています。安心していられる場所としての「居場所」という機能が、とても大きいのではないかと思います。

信田氏 私はやっぱり、コローレという場所は「安心できる場所」だと思っています。参加している人たちが通い続けているのも、ここが安全で安心できる場所だからこそだと思いますし、自分を表現しても拒否されない、そんな空気があると感じています。
ただ、だからといって何をしてもいいわけではなくて、ちゃんと見守ってくれる大人がいる中で、自由に表現ができる。だからこそ、仲間をつくることができる。それはとても大事なことだと思っています。
社会に出ると、仕事やアルバイトの中でも、同じ目的を持った仲間と関係を築いていくことが求められます。ただ、その力を家庭や学校の中で十分に学ぶ機会を得られなかった子どもや若者が、地域の中に取り残されているのではないかとも感じています。
だからこそ、そういった若者がコローレで仲間をつくり、安心して自分を表現できることには大きな意味があると思います。もし行き過ぎた表現があれば、それを注意してくれる先輩や仲間、スタッフがいる。そうした関係の中で、人との関わり方を学んでいける場所になっているのではないでしょうか。
そして、ここでの経験はコローレの中だけで完結するものではなく、その先につながっていくものだと思っています。自信をつけて、アルバイトに挑戦したり、一人暮らしを始めたり、やがては家庭を築いていく。そうした次のステップへと羽ばたいていくための土台になる場所。
いわば、ベースキャンプのような役割がコローレにはあると感じていますし、私自身もそういった機能を期待しています。

それぞれの機関からつながり、登壇した若者たちの語りを聴いて感じたこと

丸岡氏 お話の中で、不安だったものが安心に変わっていったことや、「認めてもらえた」という感覚が伝わってくる場面が多くあったと感じました。
私自身もコローレの活動を少し拝見する中で、「なぜここまで安心が生まれるのだろう」と考えることがあります。先ほど私も「居場所」という言葉を使いましたが、居場所の機能を持つ場所自体は他にもある中で、なぜコローレではここまで、わきあいあいとした雰囲気が生まれているのかと感じています。
「安心」という言葉はよく使われますが、本当に心からそう思える安心は、どこから生まれているのか。そのことを考えたときに、活動の中で強く感じるのは、「言葉」をとても大切にしているという点です。
スタッフの皆さんは、「自分の言葉で表現してごらん」と、強制するのではなく、上手に待ちながら、そっと促している。そうした関わりを多く見てきました。自分のことを言葉にするというのは、大人でも難しく、怖さを伴うものだと思います。
それでも、その場では誰に対しても平等に「表現する機会」が与えられている。そして、仲間たちはその言葉を受け止めようと寄り添いながら、どんな言葉が出てくるのかを笑顔で待っている。そうした関係性の中から、安心が生まれているのではないかと感じています。
勇気を出して発した言葉を受け止めてもらえることで、「これでいいんだ」と思えたり、少し反応をもらえることで、「話してよかった」と感じられる。そうした積み重ねが、「認めてもらえた」という感覚につながっていくのだと思います。
そして、その安心の循環が、「次はこれをやってみよう」という一歩につながっていくのではないでしょうか。

信田氏 登壇した3人はあくまでメンバーの代表であって、他にも多くのメンバーがいるのだと思いますが、それでも半年であの場に立ち、しっかりと自分の言葉で話している姿がとても印象的でした。
進行をされていたRさんも、5年前には児童相談所からつながった方です。私は直接の担当ではありませんでしたが、それぞれがどのような経過や課題を抱え、どんな思いでコローレにつないできたのかは見てきました。
そうした背景を思い返すと、半年でここまで話せるようになっている姿に、正直、感動するものがありました。もちろん、それはご本人の力だと思いますが、その力をしっかりと引き出している場があるということも大きいのではないかと感じています。
これが半年での変化だとすると、1年後、2年後にはどうなっていくのか。Rさんのような存在がロールモデルとなり、次の世代にとっての目標になっていく。そうした循環が、この場には生まれているのではないかと思いました。
また、活動の様子からもイベントはあくまで一つの場面であって、それを支えているのは日々の積み重ねなのだと感じました。日常の活動があってこそ、あのような場が成り立っているのだと思います。
やはり、人の成長を感じられるというのは、関わる側の私たちも関わっててとても楽しいし喜びを感じます。そうして育ってきた若者たちがロールモデルとなり、これからコローレにつながる若者たちにとっての先輩として、また新たな関係をつくっていく。そんな循環がこれからも広がっていくのではないかと感じました。

心の扉を叩き続ける

丸岡氏 心の扉の話は教育なんかでもよく話をする中で、「種まき」に似ているのかなというふうに感じています。
周りのいろんな人たちがその方に対して、いろいろな関わりや投げかけをしている。でも、それが今そのタイミングでは、その子にとってまだ響くものではないのかもしれない。
だからといって、関わる人たちが強引にノックし続けるわけではなくて、「ここにいるからね」とか「気づいているよ」という、そんな気持ちで、時折やさしくノックをし続けていく。
そうすると、どこかのタイミングで、その人の人生の中で何かと重なったときに、「あの時のノックだ」と思い出して、すっと扉が開く瞬間があるのかなと思うんです。
支援とか、福祉とか、教育とか、そういうものって、何かをしたからすぐに結果が出るものではないと思うんですけど、長い人生の中で、関わってきた誰かの何かが、どこかで響くときが来るんじゃないかと思っています。
そんな思いで、日々の関わりがあるんじゃないかなと感じています。

信田氏 これは本当に、児童相談所としても全く同じ思いです。
こちらの都合で芽が出るわけではないので、私たちは諦めずに種をまき、水やりも続けていく。その中で、私たちが関わっている間に芽が出たら、それはそれでとても嬉しいことです。
ただ、たとえその時に芽が出なかったとしても、どこかのタイミングで、何かのきっかけで芽が出ることがあると思っています。それは、居場所かもしれないし、仲間との出会いかもしれないし、アルバイト先かもしれない。あるいは、信頼できるパートナーと出会ったときかもしれません。
そうしたタイミングで、「あの時言われたことはこういうことだったのか」と気づいてもらえたり、私たちが願っていた思いを、もしかしたら自分の子どもに重ねて感じてもらえたり。そういう形で芽が出ていったらいいなと思いながら、日々、福祉の立場で支援させてもらっています。

豊かな地域共生社会をつくるために必要なパートナーシップ

丸岡氏 よく聞く言葉ではあるんですけど、やっぱり連携していくことかなと思います。
「また連携か」と思われるかもしれないんですけど、それだけ言われているということは、やっぱり必要だとみんなが感じているからなんだろうなと思います。
ただ、その連携の“質”が大事なのかなとも思っていて、単純に情報交換をしているだけでは、それは実現できないのではないかと感じています。
先ほども、目指しているところや見ている方向が一緒ですよね、というお話がありましたが、どこに向かっているのかを、関わる人たちみんなが意識し合えていれば、その連携は形だけのものではなくなっていくのではないかと思います。
さきほどの夏祭りのスライドも拝見して、本当にいい表情だなと感じたんですけど、地域の方々による着物や浴衣の着付けのボランティアなど、そういった関わりも含めて、コローレの皆さんが地域とのつながりを大切にしながら活動されている様子が伝わってきました。
そうした関係性も、ひとつのパートナーシップの形なのではないかと感じています。

信田氏 児童相談所は、どちらかというと家庭の課題から関わっていくことが多いんですけど、やっぱり福祉の側からも届かない人もいますし、学校からも届かない子どもや若者がいるのかなと感じています。
そう考えると、お互いが半歩ずつ手を伸ばしたりすることで、うまく関われる関係が生まれるのではないかと思います。場合によっては、両方が連携して関わることで、そこからつながれる子どもや若者が増えていく。それが大事なのではないかなと感じています。
今は「若者」「子ども」と言っていても、いずれは大人になって社会の一員となり、今度は新たな子どもや若者を支える側になっていきます。そう考えると、パートナーシップというのは、横のつながりだけでなく、世代を超えた縦のつながりも含まれているのではないかと思います。
実際、コローレは10代や20代前半の若者が中心ですが、スタッフとはまた違う立場の方々、いわば中間的な関わり方をしている方もいらっしゃいます。70代の方をはじめ、さまざまな世代の地域の方々が関わっていて、性別や世代を超えた関係が生まれています。
「共生」という言葉にすると少し堅く聞こえるかもしれませんが、そこには上下関係ではない、フラットな関係性があると感じています。本当に仲間として、友達のような関係の中で一緒に活動している。そうした日々の積み重ねが、共生やパートナーシップの実践なのかなと思います。
その中で、児童相談所や学校といった公的機関は、少し外側からではありますが、サポートに入ったり、必要に応じて中に入って一緒に関わったりすることができる。そうした関わり方も含めて、共生の中で私たちにできる役割なのではないかと感じています。

今回の活動報告会を通して伝えたいこと

今回の活動報告会には、若者の育ちと学びを伝えることをはじめ、いくつかの重要なテーマが含まれています。その中の一つが「教育と福祉が出会うところ」です。
教育とは「自分の未来を豊かにし、主体的に生きていく力を獲得すること」であり、福祉とは「生命を守ること、そして今の生活を維持するために不足しているものを補うこと」であると考えられます。そして、その二つが出会うところは「お互いを承認する力」と「ともに生きていく力」を育む場であると捉えています。
その実現のためには、それぞれの立場にある人々が手を取り合い、課題に向き合っていくパートナーシップが不可欠です。
現代社会においては、孤立・孤独、不登校、ひきこもり、ヤングケアラー、ケアリーバー、分断といった課題が次々と生じています。そして、その社会を形成しているのは、私たち一人ひとりです。だからこそ、それらの課題を自分事として捉え、ともに向き合い、解決に向けて取り組んでいくことが求められています。
その中で、縦割りを超えた支え合いのネットワークを構築し、仲間同士が支え合い、地域とつながりながら、すべての人が元気になれる取り組みを具体的に進めていくこと。それこそが、豊かな地域共生社会をつくるためにコローレが担う役割であると考えています。 

(文・あめみや けんいちろう)

※この記事は、当団体が発行している広報誌「協同ネット通信」No.88に掲載された内容をWeb用に再編集したものです。